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リターンズ番外編 その8 [Re.番外編]


なんて日だ! ...後日談

 大昔、竜の時代。
 とある小さな漁村。
 朝日が昇り、人々の1日が始まる。
 海岸で戯れる幼い子供たち。
 いつものように流れる時間。
 そんな平穏な日々がずっと続くと思っていた。
 突然、巨大な竜が到来するまでは...。


 わたしの大好きなゲームの冒頭である。

 当たり前のように過ぎてゆく毎日。
 そー言うのって、崩れて初めてその有り難さに気付くものなのだろうね。



 先日のMRIの結果は、色々あってかなり遅れて聞きにいった。
 ヘルニアの程度を言われるだけだろうと気軽に思っていたところ、衝撃の事実が...。
 なんと、仙骨に腫瘍らしきものが写っていたのだ。

 よくよく思い返してみると、MRIの時、一度撮影が終わったあと少し位置を変えてもう一度撮影したんだよね。
 おそらく、最初の撮影で端っこに異常が引っかかっていたのを撮り直してくれたのだろう。
 
 腫瘍...。
 普段、何度も口にしている単語だけど、いざそれが自分に振り返って来ると今までに感じたことのない不安感を覚えた。
 腫瘍っていっても、すべてが悪性なわけでなく良性のものもあるわけだけど、それでもやはり狼狽えるな。

 そんなで、1週間後、造影MRIを行うことになった。
 それにしても1週間とは、良からぬことをあれこれ考えるには十分すぎる時間である。
 中途半端な知識で、色々なことが浮かぶ。
 もしも腫瘍だとはっきりしたら、次は生検か?
 それは、全身麻酔かな?
 その後、手術するとなると、腹側、背側どちらからアプローチするんだろ?
 悪性だったら、もうアウトだな。

 そんなことより、病院どーしよう...。
 この時期、長期に休むとなるとキツいな。
 休業補償で、お金は多少なんとかなるとしても。
 患者さん、離れていっちゃうだろな。
 
 たいした病院じゃないんだけど、それでもなんとか今まで必死になって築き上げてきたものが、一瞬で崩れていってしまうような気がして悲しくなった。


 造影までの長く長く感じる1週間。
 毎日めちゃんこ気が重かった。
 このわたしがゲームに集中出来ないんだから、相当なものである。
 夜、いつものようにふたりでお酒を飲むと、その時はちょっとだけ気が楽になった。
 でも、夜中に目が覚めると、それから眠れなかった。
 そんな時に限って、厄介な入院の子がいたり診察が忙しかったりで、身も心もへろへろになった。


 そんなで造影の日を迎える。
 再び工事中のドラム缶の中に入る。
 わたしはヨード系の造影剤でアレルギーが出たことがあるので、今回のはどんな副作用が出るか心配したけど、なーんにも起こらなかった。

 結果は、3日後の午後に来て...とのことだった。
 その日は大学病院から専門医がやってくる日である。
 通常、結果は次の日以降なのに、そんな日に来させるってことは、今度は大学病院に送られるのか。
 大きな不安が、ここに来て現実味を帯びてきたような気がした。

 それからの3日間は、今までにも増してしんどかった。
 心配事を抱えての仕事って、ほんとにキツいな。


 さて、結果発表の日。
 いつものように仕事をする。
 夜、自分の病院が終わってから急いで行けば、間に合うだろう。
 夜までの時間は長い。時計を見るたびに気が重くなった。
 
 夜の時間が迫れば迫るほど、気持は悪い方へと向かって焦り出す。
 ひょっとして、明日すぐに大学病院へ行けなんて言われないよね。
 そんなことになったら...。
 診察は休んでもいいとして、入院の子はどーする。
 おばあちゃんのダックスと、状態が落ち着いたカッコカリの子は舞ちゃんでも大丈夫だけど、急性膵炎の子はまだ状態がよくないから継続した治療が必要だ。
 強制退院ってわけにもいかないし...。
 遠くの病院ってのも困るだろうし...。
 まぁ、そーとなったら、代診先の先生のお友達の病院がすぐ近所にあるので、その先生にお願いしよう。
 慌てて、その子の今までの状況をワープロに打ち込んだ。
 状況次第では引き継ぎの電話を今晩中にしないといけないな。診察時間に間に合うように、病院の電話番号をメモして持って行かなきゃ。

 あと、リンパ節のtru-cutをした子がいたな。
 リンパ腫の可能性があるんだよね。
 でも、これは、結果が来てから対処すればいいか。

 幸か不幸か夜の診察はヒマだったので、終了の少し前にもう閉めることにした。
 さぁ、出かけよう、としたところで駐車場に車が入った。
 今から診察したら、間に合わなくなっちゃうかもしれない。
 しばらくして電話が鳴る。駐車場の車からだろう。
 舞ちゃんに出てもらい、断ってもらった。
 ごめんなさい。

 緊張感MAX状態で病院へ向かう。
 受付を済ませ、しばらく待つ。

 わたしの前の順番のヒトが呼ばれ、そして診察が終わって出てきた。
 いよいよ、わたしだ。

 さぁ呼ばれるぞ...、ってとこで、みょうに長い時間が流れる。
 
 おいおい、わたしの画像を見て悩んでんじゃないよね。
 べそかきそうになる...。

 そして、やっと名前が呼ばれた。



 
 結局、造影剤は異常な箇所に流れて行ってなくって、腫瘍の疑いは晴れ、経過観察でよいということだった。

 緊張感が一気に飛んだ。
 散々悩んで損した、という気持よりも、安堵の気持が遥かに大きかった。
 いやマジで、どーなるかと思った。

 帰りの車の中で、思いは巡る。
 最初にMRIをとった時、その結果を聞きに行く日、病院でドタバタしていて行くことが出来なかった。そして、1週間遅れ、つまり撮影から2週間後に結果を聞くことになった。
 さらにそれから造影までに1週間。
 もしも今回のものが悪性の可能性のあるものなら、その3週間はどんな後悔をわたしに与えるのだろう、なんて真剣に考えた。
 動物のことなんて優先せずに、自分のことを考えてれば良かったのに...、なんて。

 わたしは動物のことを、ヒトの都合で擬人化したり美談にしたりするのは嫌いなんだけど、でも、こうして最悪の事態を免れたのは、あの日亡くなったダックスとゴールデンが、そして今現在治療をしてる子たちが、『もう少し働いてよ』なんて、わたしに時間をくれたのかもしれないな、って考えずにはいられなかった。
 なんだか、動物たちに借りが出来たような気がした。


 今回はこんなコトで済んだけど、だからといって体全体が問題ないって言われたわけじゃない。
 もう、健康ってどんなだったか忘れちゃったから、いつ何が起こってもおかしくないものな。
 今まで幸いなことに、長期に病院を休むことなくやって来れたけど、これから先もそうだとは限らない。
 わたしと同年代のヒトやもっと若いヒトだって、志半ばで亡くなってしまうことだってあるのだから。
 万が一のことがあった時に自分の病院をどうするか、元気なうちにいろいろ考えておかないといけないな。
 
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